ソロ社会化──「おひとりさま」が社会の主流となる時代に

2025年には総人口に占める一人暮らしの割合は16%に達し、6人に1人強が一人暮らしになる状況となります。私たちが生きる現代社会では、「おひとりさま」というライフスタイルが特別なものではなく、当たり前の選択肢になりつつあります。

かつては家族や地域といった“集団”が生活の基本単位でしたが、今では個人を基盤とした生き方が広がりつつあります。このような傾向を表す言葉が、「ソロ社会化」です。

 

ソロ社会化とは?

「ソロ社会化」とは、社会の構成単位が、従来の家族や地域共同体などの“集団”から、“個人”へと移行している現象を指します。
人々が単独で行動し、単独で生活を営む場面が増えており、「一人で生きる力」や「一人で過ごす快適さ」が、ひとつの価値として認識されるようになってきました。

この流れは一部の特殊なライフスタイルにとどまらず、今や社会全体の構造変化として進行しています。

ソロ社会化が進む背景

この社会変化の背後には、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。

ライフスタイルの多様化

結婚・出産といった「普通の人生」がもはや絶対的な価値ではなくなりました。独身を選ぶ人、結婚しても子どもを持たない人、または人生の途中で一人暮らしを始める人も増えており、多様な生き方が受け入れられる社会に変化しています。

経済的自立の進展

特に女性の社会進出が進んだことで、誰かに依存せずとも生活できる人が増えました。性別に関係なく、個人で生計を立てることが可能な社会基盤が整いつつあります。

ICT(情報通信技術)の進化

スマートフォンやSNSの登場により、一人であっても社会との接点を持ち続けることが可能に。情報収集や娯楽、買い物、人間関係の構築まで、あらゆることが「一人で」「自宅から」できる時代です。

都市化と地域社会の希薄化

都市部への人口集中と核家族化により、近隣とのつながりは薄れ、孤立を感じる人も少なくありません。特に若者や高齢者の一人暮らしが顕著です。

個人主義の広がり

「みんなと同じ」よりも「自分らしさ」や「自分の自由」を大切にする価値観が広まり、集団に属するよりも一人でいることに安心感を覚える人が増えてきました。

少子高齢化

高齢者の単身世帯が増える一方、若い世代でも結婚や同居を選ばない人が増加。家族という形が大きく変容していることも、ソロ社会化を後押ししています。

 

ソロ社会化の現れ──日常の中に広がる「ひとり」のカタチ

ソロ社会化は、私たちの暮らしのさまざまな場面に表れています。

単身世帯の増加

統計上でも、全世帯のうち単身世帯の割合は年々増加。特に都市部では、半数以上が一人暮らしという地域もあります。

ソロ消費の拡大

「一人専用」の家電、冷凍食品、外食メニュー、旅行プランなどが充実。一人旅や「ソロ活」(一人での趣味活動)も一般的になり、商業の世界でも“ひとり”がひとつのマーケットとして認識されています。

プライベート重視の空間設計

レストランのカウンター席や、カラオケの一人用ルーム、シェアハウス内の個室化など、「ひとりでも快適に過ごせる空間」が求められています。

オンラインコミュニティの台頭

リアルな人間関係よりも、ネット上で趣味や興味関心を共有できる仲間とつながる人が増えました。SNSやサブカルチャー系のオンラインサロンも、現代的な“つながり”のあり方の一つです。

働き方の変化

テレワークの普及により、出勤せずに自宅で働く人が増え、職場という「所属の場」が薄れています。副業やフリーランスなど、個人単位で働く形も一般的になってきました。

 

ソロ社会化の光と影

ソロ社会化のメリット
  • 自由な時間と行動の確保:自分のペースで生活しやすく、束縛が少ない。
  • 自己実現の可能性:自分の興味や夢に時間をかけることができる。
  • 人間関係のストレス軽減:煩わしい付き合いや干渉が少なく、気楽さを感じる人も。
ソロ社会化のデメリット
  • 孤立や孤独のリスク:つながりがない中で精神的な孤独に陥ることも。
  • 緊急時の対応の難しさ:病気や災害などで助けを求めにくい。
  • サポートの不足:子育てや介護などを一人で担う負担が大きくなる。
  • 経済的負担の偏り:生活費や住居費を全て自分でまかなう必要がある。

 

ソロ社会化とどう向き合うか?

今後、ソロ社会化の流れはますます加速するでしょう。単身者や“おひとりさま”が安心して暮らせる社会の仕組みやサービスの整備が急務です。

たとえば、

  • 地域でのゆるやかなつながり(見守りや互助の仕組み)
  • シェア型の居住スタイル(プライバシーを守りつつ、緩やかに助け合える)
  • おひとりさま向けの終活サポート(人生の後半を安心して生きるための準備)

などが、今後ますます重要になってくるでしょう。

 

「ソロ社会化」は、個人がより自由に、自分らしく生きる選択肢が増えた社会の表れでもあります。

一方で、孤独や不安とどう折り合いをつけていくかは、私たち一人ひとりが向き合うべき課題です。

 

「おひとりさま」が当たり前になる時代に、私たちはどんなつながりを持ち、どんな支え合いの形を作っていくべきなのでしょうか。

ソロ社会化をポジティブに生きるには、「個」と「社会」の間にある、新しい“ゆるやかなつながり”の可能性を模索することが鍵になるのかもしれません。

大切なのは、「ひとり=孤立」と決めつけない、思い込まないこと。
自分らしく生きながらも、必要なときにふっと支え合える、“ゆるやかなつながり”を、私たちはつくっていけます。

それは、毎日顔を合わせなくても、ふとした言葉や気遣いでつながるような関係かもしれません。
SNSでの共感、趣味の集まり、地域での小さな助け合い。そんなささやかな関わりが、これからのソロ社会にあたたかさをもたらします。

ソロ社会化とは、ただ一人で生きることではなく、「個」と「社会」が新しい距離感で向き合う、生き方の再構築でもあります。
その変化の中で、自分自身と向き合い、他者とのつながりを自ら選び取っていく。

そんな時代を、私たちは今、歩み始めているのです。

 

そして、頼れる人の限られる「おひとりさま」こそ終活を早めに始める必要があります。”「おひとりさま」の終活”については、また別の機会に取り上げたいと思います。

 

 

この記事を書いた人

今井 賢司
今井 賢司終活カウンセラー1級 写真家・フォトマスターEX
終活サポート ワンモア 主宰 兼 栃木支部長。立教大学卒。写真家として生前遺影やビデオレター、デジタル終活の普及に努める傍ら、終活カウンセラーとして終活相談及びエンディングノート作成支援に注力しています。

また、「ミドル世代からのとちぎ終活倶楽部」と題し「遺言」「相続」「資産形成」といった終活講座から「ウォーキング」「薬膳」「写経」「脳トレ」「筋トレ」「コグニサイズ」などのカルチャー教室、「生前遺影撮影会」「山歩き」「キャンプ」といったイベントまで幅広いテーマの講座を企画開催。

こころ豊かなシニアライフとコミュニティ作りを大切に、終活支援に取り組んでいます。

終活カウンセラー1級
エンディングノートセミナー講師養成講座修了(終活カウンセラー協会®)
ITパスポート
フォトマスターEX

終活相談・講座のご依頼はお問い合わせフォームからお願いします。

- 近況 -
・栃木県シルバー人材センター連合会にて終活講座を開催しました
・JAしおのや様のご依頼にて終活講座を開催しました
・塩谷町、宇都宮市、真岡市のご依頼にて終活講座を開催しました
・とちのき鶴田様、とちのき上戸祭様にて終活講座を開催しました
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・終活相続ナビに取材掲載されました
・下野新聞に取材記事が特集掲載されました(ジェンダー特集)
・リビングとちぎに取材記事が一面掲載されました(デジタル終活)

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