「終活」が狙われている ― 終活詐欺にどう向き合うか

終活は、人生の最終章を自分らしく整えるための大切な取り組みです。
不安を整理し、家族や大切な人への思いを形にする前向きな行為でもあります。

 

終活詐欺にご注意しかし今、その善意や不安につけ込む“終活詐欺”が問題になっています。

今回報じられた事件では、東京・新宿区の不動産会社の関係者らが逮捕されました。警視庁によれば高齢者39人に52物件、総額約7億5000万円を販売していたとされます。仕入れ値は約1億3000万円。
被害者の9割は一人暮らしの高齢者でした。

電話で接触し、資産状況を探り、手土産を持って通い、食事を共にする。
「保険の見直しをしましょう」「家賃収入が入ったら安心ですよ」と語りかけ、信頼関係を築いたうえで契約に至らせる。

これは単なる不動産トラブルではありません。
“終活詐欺”と呼ばれる構造的な問題です。

終活詐欺の本質

終活詐欺の特徴は、「善意の顔をして近づく」ことです。

  • 不動産投資

  • 不用品の買い取り

  • お墓や葬儀の生前契約

  • 相続対策の名目

  • 保険の見直し

いずれも本来は人生設計の中で検討されるべきサービスです。実際に必要な場合もあるからこそ、単純に“怪しい”と切り捨てられず、判断が難しくなります。

終活の場面では、「子どもに迷惑をかけたくない」「将来の不安を減らしたい」という思いが強く働きます。悪質な業者は商品そのものよりも、まずその気持ちに寄り添う姿勢を見せ、信頼関係を築いたうえで契約へ導きます。

終活詐欺の本質は、安心感や信頼関係を利用して高額な契約へ導く点にあります。だからこそ、見分けが難しいのです。

 

狙われやすい人の特徴

今回の事件でも、標的の多くは一人暮らしの高齢者でした。

共通点は――

  • 相談相手が身近にいない

  • 子どもに迷惑をかけたくないと考えている

  • 老後資金への不安がある

  • 「今のうちに整理しておきたい」と思っている

「今のうちに整理しておきたい」という前向きな気持ちが、結果的に判断を急がせてしまうこともあります。
つまり、真面目で責任感の強い人ほど狙われやすいのです。

さらに最近では、SNSに訃報を掲載した遺族へ接触するケースも指摘されています。いわゆる“おくやみ詐欺”の手口が、より巧妙化しているのです。
訃報情報を手がかりに遺族へ連絡し、「故人に借金がある」「手続きが必要」などと不安をあおって金銭を要求するケースも報告されています。

多様化・複雑化する終活ニーズ

遺言・相続、医療・介護、葬儀やお墓など、高齢者からの相談内容は多岐にわたり、しかも年々複雑化しています。

終活サポート ワンモアでも周辺自治体や企業団体からの終活講座のご依頼も年々増加しており、公式サイトの PV も右肩上がりの状況です。

その一方で、相談者ご本人が

  • 「何から着手すればよいか」
  • 「そもそも何が問題なのか」

を整理できていないケースが多いのが実情です。

<例>

  • 相続で家族が争う「争族」は資産家の問題だと思っている
    → 実際には、争族の約 78%は一般家庭(遺産総額 5 千万円未満)で発生
  • 遺言は亡くなる直前でも間に合うと思っている
    → 認知症が進むと遺言書を作成できず、預貯金も凍結されるケースもある

【終活】老後不安 長寿リスク高齢化の進展により、専門家の支援はますます重要になっています。

しかし、終活が社会課題として認識されるようになってまだ日が浅く、「どこに相談すればよいのか分からない」という声が多いのが実状です。

例えば、

「遺言は弁護士や司法書士に」と聞いて法律の専門家に相談したものの、法律や手続きの話だけで終わってしまい、不安が解消されない
…といった相談が新たに持ち込まれるケースもあります。

また、私の現場実感として、特に女性の場合、解決策そのもの以上に「まず不安や愚痴を聞いてほしい」というニーズが強い傾向があります。

今まさに、こういった“心の隙間”につけ込む犯罪が起きていると感じています。

 

相談先を見極める「ものさし」

終活は単独の業界ではありません。
法律、税務、不動産、介護、葬儀など、複数の専門分野が横断する特殊な領域です。

従って、終活の専門家はすべてを一人で抱え込む人ではなく、適切な専門家へ安全・着実に繋ぐ『ハブ(中継点)』であるべきです。
専門の境界線を明確に示しつつ、その交通整理ができる相手かどうかが、信頼の指標になります。

終活相談 終活サポート ワンモア(栃木県)終活相談をする場合、まずは実績や連絡先の有無などをよくみてから判断することが大切です。例えば、連絡先が SNS のアカウントのみといったケースは慎重に判断すべきかと。
そして、誠実な専門家なら、自分の得意分野と、ここからは別の専門家(弁護士や税理士など)が必要だという境界線をはっきり示してくれるはずです。

逆に、何から何まで自分一人で解決できると謳い、契約を急がせる場合は、少し立ち止まって周囲に相談してほしいですね。

終活の専門家は“何でも屋”ではありません。信頼できる人は、必要な専門家にきちんと案内してくれる“道案内役”です。そこが見極めのポイントです。

終活相談の見極めチェックポイント

1  得意分野を明確に説明しているか

誠実な専門家は、
「ここまでは自分の専門」
「ここからは弁護士・税理士などが必要」
と線引きをします。

逆に
「全部自分で解決できます」
と言う人は要注意です。

2  契約を急がせないか
  • 今日中に決めてください
  • 今契約すれば特典がある

こうした言葉が出たら一度立ち止まる。終活は急ぐものではありません。

3  連絡先・実態が明確か
  • 所属団体
  • 所在地
  • 電話やメールアドレス
  • 実績(講座やブログ公開など)
  • 他の専門家との連携

が確認できるかどうか。
“肩書きだけ”で判断しないことが大切です。

4  「家族に相談してください」と言えるか

本当に信頼できる人は「ご家族とも相談してください」と言えます。
孤立させようとする人は危険です。

終活は家族や周囲と歩調を合わせて進めるもの

「親の終活」をどうするか問題

生前贈与  終活サポート ワンモア(栃木県)最近は「親の終活をどうしたらよいか?」という相談も増えており、そのなかで「親の見守り」が大きな関心事になっています。
上記のように高齢者を狙う詐欺被害も多発しており、家族が連携して自衛手段を講じる必要が高まっています。

私は「ミドル世代からの終活」を提唱しています。できれば、親子で終活をオープンなかたちで進めることが望ましいです。
親子ともに終活を考えることで、互いの本音や不安、悩みを知って理解することもできますし、選択肢も増え、様々な気づきやより良い対策・解決策が可能になると考えています。

個人の悩みや不安を身近な人に話すのは抵抗があるものですが、周囲と共有することで、効果的でより良い終活が実現できると思います。
終活は個人事だけでなく、家族の問題でもあるのですから。

そして、終活の課題のなかには、高齢になってからでは間に合わない事柄も多く、始めるのに早すぎることはありません。

終活は“弱み”ではなく“力”である

本来、終活は
「不安につけ込まれるような行為」ではなく、
「自分の人生を主体的に整える行為」です。

孤独が危険なのではありません。
孤立が危険なのです。

終活とは、財産整理だけでなく、

  • 信頼できる人を持つこと

  • 相談できる関係性を築くこと

  • 情報を鵜呑みにしない姿勢を持つこと

そうした「人とのつながり」を確認する時間でもあります。

私たちにできること

終活カウンセラーとして、強くお伝えしたいのは、

終活の相談は「契約ありきの場」ではなく「対話の場」であるべき

ということです。

本当に寄り添う支援者は、
あなたの財産ではなく、あなたの人生を見ています。

終活を始めるときは、
どうか一人で決めないでください。

家族でも、友人でも、第三者でもいい。
「誰かに話す」ことが最大の防御になります。

終活は、人生の最終章を整える行為。
それが誰かの利益のために利用されることがあってはなりません。

困ったときの公的相談窓口

● 消費者トラブル全般

消費者庁/消費者ホットライン「188(いやや!)」
最寄りの消費生活センターにつながります。
不動産・訪問販売・契約トラブルなど幅広く対応。


● 高齢者の消費者被害・悪質商法

国民生活センター
高齢者被害の事例や注意喚起情報も掲載。


● 法律相談(相続・契約など)

日本弁護士連合会
各地の弁護士会の法律相談窓口を案内。


● 地域包括支援センター

お住まいの市区町村に設置。
介護・見守り・高齢者の生活支援全般の相談窓口。

(宇都宮市の場合は宇都宮市役所」公式サイトから検索可能)

少しでも不安を感じたら、契約前でも迷わず公的窓口へ相談してください。早めの相談が被害防止につながります。

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この記事を書いた人

今井 賢司
今井 賢司終活カウンセラー1級 写真家・フォトマスターEX
終活サポート ワンモア 主宰。立教大学卒。写真家として生前遺影やビデオレター、デジタル終活の普及に努める傍ら、終活カウンセラーとして終活相談及びエンディングノート作成支援に注力しています。

また、「ミドル世代からのとちぎ終活倶楽部」と題し「遺言」「相続」「資産形成」といった終活講座から「ウォーキング」「薬膳」「写経」「脳トレ」「筋トレ」「コグニサイズ」などのカルチャー教室、「生前遺影撮影会」「山歩き」「キャンプ」といったイベントまで幅広いテーマの講座を企画開催。

こころ豊かなシニアライフとコミュニティ作りを大切に、終活支援に取り組んでいます。栃木県宇都宮市在住。日光市出身。

終活カウンセラー1級
エンディングノートセミナー講師養成講座修了(終活カウンセラー協会®)
ITパスポート
フォトマスターEX

- 近況 -
・「JAこすもす佐野」「栃木県シルバー人材センター連合会」「宇都宮市立東図書館」「塩谷町役場」「上三川いきいきプラザ」「JAしおのや」「真岡市役所」「とちのき鶴田様」「とちのき上戸祭様」「栃木リビング新聞社」「グッドライフ住吉」にて終活講座を開催しました
・JAこすもす佐野にて生前遺影撮影会を開催しました

終活相談・講座のご依頼はお問い合わせフォームからお願いします。
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終活相続ナビに取材掲載されました
・下野新聞に取材記事が特集掲載されました(ジェンダー特集
・リビングとちぎに取材記事が一面掲載されました(デジタル終活)

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