小説から終活を考える ― 人生を見つめるおすすめの本

「終活」という言葉から多くの方が思い浮かべるのは、相続や介護、実家の片付けといった、具体的で現実的なテーマかもしれません。書店に並ぶ終活本や、雑誌の特集記事も、そういった内容が中心です。

もちろん、それらは避けて通れない大切な話題です。
けれど、人生の終わりを考えるという営みは、本当にそれだけで語り尽くせるものなのでしょうか。

小説やエッセイ、映画のなかには、親の老い、家族との距離、自立と孤独、別れと希望といったテーマが、マニュアルや解説書よりも、ずっと深く、静かに描かれている作品があります。

物語や映像は、答えを与える代わりに、
「自分ならどう生きるだろう」「何を大切にしたいだろう」と、心の奥に問いを残します。
そこに、終活のヒントがあるのではないかと感じています。

 

今回は「終活カウンセラーが選ぶおすすめの終活本、小説篇」です。

 

『おひとりさま日和』(大崎梢ほか)

『おひとりさま日和』(大崎梢ほか)6人の女性作家によるオムニバス形式の短編集。それぞれ異なる主人公の人生が描かれ、どの物語にも自然と共感できる瞬間があります。

終活本というと、どうしても介護や争族といった重たいテーマが前面に出がちですが、本書は「ひとりで生きること」を前向きに捉え、読後にやさしい希望が残ります。
これからの生き方を考え始めた方に、肩の力を抜いて手に取ってほしい一冊です。

 

『55歳からのハローライフ』(村上龍)

『55歳からのハローライフ』(村上龍)第二の人生の入口に立ち、迷いや葛藤を抱えるミドル世代の転機を描いた連作短編集です。
仕事、家族、老い、自分の居場所――どれも決して特別ではないからこそ、胸に刺さります。

「ミッドライフクライシス」という言葉が示す通り、人生の折り返し地点で立ち止まることは、決して後ろ向きなことではありません。
終活サポート ワンモアでも「ミッドライフクライシス」をテーマにした終活講座を構想し、準備を進めています。

 

『ライオンのおやつ』(小川糸)

『ライオンのおやつ』(小川糸)瀬戸内に浮かぶ島を舞台にした、ホスピスでの物語。
あらすじは伏せますが、死を描きながらも、全編に流れているのは静かな温もりです。

「死ぬこと」と「生きること」は対立するものではなく、地続きのものなのだと、優しく、そして希望をもって問いかけてきます。
終活を「終わりの準備」ではなく、「いまをどう生きるか」と捉え直すきっかけを与えてくれる作品です。

 

『家族じまい』(桜木紫乃)

『家族じまい』(桜木紫乃)認知症の高齢女性を軸に、家族それぞれの視点から「仕舞われていく家族のかたち」を描いた短編連作。
洗練された日本料理のように研ぎ澄まされた文体が、登場人物の心象を鮮やかに立ち上げ、精密に、そして残酷なまでに切り刻んでいきます。

幼少期を振り返ればわかるように、家族は決して不変のものではありません。
新たな家庭を築き、やがて生まれ育った家族と訣別する時が訪れます。
そこに絶望を見るのか、希望を見るのか――その答えは、読者一人ひとりに委ねられています。

 


今回ご紹介した作品に共通しているのは、「正解」や「こうすべきだ」という答えが示されていない、という点かもしれません。
そこがノウハウ本やマニュアルとの大きな違いで、小説という作品を通して考える余白が存在するのだと私は考えます。

 

家族のかたちは変わっていく。
人はひとりになることもある。
老いや死は避けられない。
それでも、人生には選び直す余地があり、感じ直す時間が残されています。

終活は、何かを“終わらせる”作業ではなく、これまでの人生を見つめ、これからの時間をどう使うかを考える営みです。

本を読むことで自分の人生と重ねたり、誰かの気持ちを想像したり、言葉にならなかった想いに気づくこともあります。

もし今、立ち止まっている方がいたら。
これからの生き方を考え始めたいと思っている方がいたら。
これらの一冊が、そっと背中を押す存在になれば幸いです。

 

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この記事を書いた人

今井 賢司
今井 賢司終活カウンセラー1級 写真家・フォトマスターEX
終活サポート ワンモア 主宰 兼 栃木支部長。立教大学卒。写真家として生前遺影やビデオレター、デジタル終活の普及に努める傍ら、終活カウンセラーとして終活相談及びエンディングノート作成支援に注力しています。

また、「ミドル世代からのとちぎ終活倶楽部」と題し「遺言」「相続」「資産形成」といった終活講座から「ウォーキング」「薬膳」「写経」「脳トレ」「筋トレ」「コグニサイズ」などのカルチャー教室、「生前遺影撮影会」「山歩き」「キャンプ」といったイベントまで幅広いテーマの講座を企画開催。

こころ豊かなシニアライフとコミュニティ作りを大切に、終活支援に取り組んでいます。栃木県宇都宮市在住。日光市出身。

終活カウンセラー1級
エンディングノートセミナー講師養成講座修了(終活カウンセラー協会®)
ITパスポート
フォトマスターEX

- 近況 -
・「JAこすもす佐野」「栃木県シルバー人材センター連合会」「宇都宮市立東図書館」「塩谷町役場」「上三川いきいきプラザ」「JAしおのや」「真岡市役所」「とちのき鶴田様」「とちのき上戸祭様」「栃木リビング新聞社」「グッドライフ住吉」にて終活講座を開催しました
・JAこすもす佐野にて生前遺影撮影会を開催します

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終活相続ナビに取材掲載されました
・下野新聞に取材記事が特集掲載されました(ジェンダー特集
・リビングとちぎに取材記事が一面掲載されました(デジタル終活)

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