社会保障の公平な負担議論が進む今こそ、シニアの働き方を見直すとき

制度の議論が進むいま、自分の働き方を考え直すタイミングです

厚生労働省の社会保障審議会では、医療や介護を支えるための社会保険制度をどう見直していくか、活発な議論が続いています。少子高齢化が加速し、「誰がどれだけ負担するのが公平なのか」という問いは、避けて通れないものになっています。

その背景には、「現役並み所得」とされる人の割合が減っている問題があります。制度上の基準は2006年以来変わっていませんが、この間に物価や賃金が上昇し、現役世代の平均的な所得水準は高くなりました。つまり、制度で定める「現役並み」の基準は、今の実態から見ると相対的に低くなっているのです。その結果、本来なら3割負担となる層が制度上は2割負担のままになり、「現場の感覚と制度がずれてきている」という指摘が出ています。こうした事情をふまえ、いま“支払能力に応じた負担”を求める議論が進んでいるのです。

公平な負担の議論が進むこと自体は、とても大切なことです。ただし忘れてはならないのは、制度がどれだけ合理的に整えられても、私たち一人ひとりの生活がすぐに安定するわけではないということです。特に50〜60代は、健康、家族、仕事、介護──人生の転機が一気に押し寄せる世代です。同じ年齢でも、働ける状況も暮らしぶりもまったく違います。

だからこそ、いま制度を見直す議論が進むこのタイミングで、自分自身の働き方や役割も見直していく必要があるのではないでしょうか。

 

働く現場から見える「新しいシニアの働き方」

再雇用の現実、学び直しに挑む人たち

社会保障の議論はとても大事ですが、その先にある「働く現場」を見ると、すでに変化は始まっています。いくつか身近な事例をご紹介します。

60歳で再雇用、でも“働き方を変えたら生きやすくなった”男性

働くシニア世代ある企業で働くAさん(60代前半)は、定年後の再雇用で仕事を続けています。ただ、以前と同じ働き方では体力的にきつく、心の余裕もなくなっていました。
そこで思い切って、「週4日勤務・時短」の働き方に切り替えました。収入は多少減りましたが、生活のリズムが整い、家族との時間も増えました。

Aさんはこう言います。
減ったのはお金じゃなくて、“張りつめていた気持ち”のほうでした。」

制度がどう変わるかに関わらず、働き続ける形を自分に合うように調整する。これはシニア期の大切な選択肢の一つです。

50代後半で“学び直し”を始めた女性のケース

働くシニア世代Bさん(50代後半)は、親の介護が落ち着いたタイミングで、以前から興味のあった福祉資格の勉強を始めました。学び直しに不安はありましたが、「これからの10年、20年を誰かの役に立ちながら生きたい」という気持ちが背中を押しました。

資格取得後は、週数日のパートとして地域の高齢者支援に携わっています。
学び直しをしたことで、ただ年齢を重ねるだけじゃなくて、人生がもう一度ひらけた気がします」と話します。

働くことが単なる収入の確保ではなく、「社会とつながり続ける手段」になっている事例です。

70代で“ボランティアと仕事のハイブリッド”という選択

働くシニア世代Cさん(70代)は、週に数回の清掃の仕事を続けながら、地域のボランティアにも参加しています。「完全に仕事を辞めてしまうのは張りを失いそう。でもフルタイムではきつい」。そんな気持ちの折り合いをつけた働き方です。

仕事とボランティアの組み合わせで、収入と生きがいの両方が保てている」と言います。

シニアの働き方は“働くか・辞めるか”だけではなくなりました。今の時代は、もっと柔軟で、多様で、自分に合ったスタイルが選べるようになってきています。

 

制度改革の先にある “人生後半のデザイン”

終活と働き方はつながっています

社会保障制度の見直しが進むと、「負担が増えるのでは」「老後は大丈夫か」と不安を感じる方もいるかもしれません。しかし、制度がどう変わるか以上に大事なのは、これからの人生をどう生きたいかという視点です。

終活というと「死に支度」という印象を持つ方もいますが、それは逆です。人生後半をどう生き切るかを考える“生き方の整理” こそが終活の本質です。

そのなかで、働き方はとても重要な要素になります。

  • 体力に応じて働き方を調整する
  • 収入と時間のバランスを考える
  • 地域とのつながりをつくる
  • 誰かの役に立つ経験を積む
  • 新しいことを学び、人生後半を更新する

これらはすべて、シニアの働き方と終活をつなぐキーワードです。
制度の見直しが進む“今”は、人生後半の働き方や役割を見つめ直す絶好の機会でもあります。

社会保障制度

社会保障制度は本来相互扶助であり、支える側と支えられる側の固定的な関係で成り立つものではありません。50代、60代は、まだまだ社会の担い手として活躍できる世代です。それと同時に、人生後半の幸福や生きがいを、自分でデザインしていく時期でもあります。

制度の議論を“他人事”として眺めるのではなく、
「私のこれからの働き方」「人生後半の生き方」を考えるきっかけとして捉える。
その視点が、これからの時代を生きる私たちに求められているのだと思います。

 

この記事を書いた人

今井 賢司
今井 賢司終活カウンセラー1級 写真家・フォトマスターEX
終活サポート ワンモア 主宰 兼 栃木支部長。立教大学卒。写真家として生前遺影やビデオレター、デジタル終活の普及に努める傍ら、終活カウンセラーとして終活相談及びエンディングノート作成支援に注力しています。

また、「ミドル世代からのとちぎ終活倶楽部」と題し「遺言」「相続」「資産形成」といった終活講座から「ウォーキング」「薬膳」「写経」「脳トレ」「筋トレ」「コグニサイズ」などのカルチャー教室、「生前遺影撮影会」「山歩き」「キャンプ」といったイベントまで幅広いテーマの講座を企画開催。

こころ豊かなシニアライフとコミュニティ作りを大切に、終活支援に取り組んでいます。栃木県宇都宮市在住。日光市出身。

終活カウンセラー1級
エンディングノートセミナー講師養成講座修了(終活カウンセラー協会®)
ITパスポート
フォトマスターEX

- 近況 -
・「JAこすもす佐野」「栃木県シルバー人材センター連合会」「宇都宮市立東図書館」「塩谷町役場」「上三川いきいきプラザ」「JAしおのや」「真岡市役所」「とちのき鶴田様」「とちのき上戸祭様」「栃木リビング新聞社」「グッドライフ住吉」にて終活講座を開催しました
・JAこすもす佐野にて生前遺影撮影会を開催します

終活相談・講座のご依頼はお問い合わせフォームからお願いします。
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終活相続ナビに取材掲載されました
・下野新聞に取材記事が特集掲載されました(ジェンダー特集
・リビングとちぎに取材記事が一面掲載されました(デジタル終活)

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