専門家に頼む前に知っておきたい、死後手続きの現実

終活をはじめる死後の手続きは、書類や申請だけで完結するものではありません。
葬儀や法要、仏壇・墓といった宗教的な判断から、契約やこまごまとした調達、財産に関わる実務まで、気持ちの整理がつかない時期に、家族は多くの選択を同時進行で求められます。
父を見送った経験を通じて感じたのは、事前に知っているか、そして備えているかどうかで、遺族の負担は大きく変わるということでした。

この記事では、専門家に頼む前に知っておきたい死後手続きの「現実的な負担」について、実体験をもとにお伝えします。

 

葬儀場は生前に探しておく

【終活】葬儀を準備する延命措置を終了した後、すぐに地元の葬儀社をいくつか訪ねて歩きました。担当者と直接話すことで、価格だけでは見えない社風や担当者の考え方がわかり、とても参考になりました。

結果として信頼できる葬儀社と出会えたことで、遺族は大きく救われました。深い悲しみのなかでは、言葉遣いひとつでも大きな傷になったりします。
事前相談に出かけた7日後に父は息を引き取ったのですが、看取った当日の朝に電話をすると40分ほどで駆けつけてくれたことも心強かったです。

今はほとんどの人が病院や介護施設で最期を迎える時代ですが、亡くなって数時間のうちに葬儀社を決め、移さなければなりません。情報がなければ「名前を知っている」「誰かの葬儀で行ったことがある」「空いていたのがそこだけだった」というだけの頼りない理由で、大切なセレモニーの場を決定することになってしまうのです。

当初、母は家族葬を希望していましたが、葬儀社の助言もあり、生前の立場や交友関係を考慮して一般葬に変更しました。結果的に多くの弔意を賜り、遺族が慰められただけでなく、父の知らなかった一面やエピソードを知ることもできました。

事前相談の際、同業者のなかには事情や意向も聞かずに「一般葬ありき」でセールスしてくるところもあって違和感を抱いていたのですが、それとは対象的な対応でした。

注意点
・「急いで決める」状況を避けるためにも、あらかじめ候補を実際に訪ね、見ておく
・価格だけでなく、相談のしやすさや説明の丁寧さをみる

 

法定相続情報一覧図の作成(法務局)

法定相続情報照明制度を利用しよう法定相続情報一覧図(相続関係説明図)とは、亡くなった人(被相続人)と相続人との関係を家系図のように線でつないでまとめたもので、誰が相続人になるのかを一目で把握できる図です。法務局での相続登記や銀行での預金解約など、毎度戸籍書類の束を用意する必要がなくなります。各種相続手続きをスムーズに進めるために作成され、戸籍謄本の原本還付(コピー返却)が受けられるようになるため作成が推奨されます。費用的にも数千円の節約になると思います。

法務局で申請、作成には2周間ほどかかりますが、申請は無料(住民票などの添付書類は必要)で、申請書類も簡単な家系図のようなものを書く程度なので、面倒に思わず利用したい制度です。

法定相続人関係図は、想像以上に多くの場面で役立ちました。預金や保険の解約、遺産分割協議書の作成、車両の売却手続き、相続登記などで繰り返し提出を求められ、結果的に費用と手間の大幅な削減につながりました。余談ですが、担当者もこの書類を用意してあることを知ると嬉しい表情になります。


なお、行政書類に関連してですが、自治体によっては印鑑証明等の書類のコンビニ発行に対応していない場合があるため、事前確認をおすすめします。死亡手続きの一括窓口も普及していますが、これも自治体によっては未対応です。

住民向けの終活講座の開催などの状況などもばらつきがあるのが現実で、自分の住む自治体が福祉サービスに熱心かどうかもチェックしておきたいものです。

「法定相続情報証明制度」について|法務局

 

金融機関・証券会社への連絡

終活 銀行手続き金融機関や証券会社では、相続手続き専用の担当部署が決まっていることがほとんどです。原則として予約制のため、早めに連絡しておくと安心です。
口座があるかとうかの調査は1~2ヶ月を要することも多く、早期の手続きをお勧めします。

葬儀費用や家賃支払いなどで必要の場合は預貯金の仮払い制度を利用しましょう。遺産分割前でも相続人が葬儀費用や当面の生活費などのために、被相続人の口座から一定額を単独で引き出せるようにした制度です。
※相続放棄や遺産分割協議との兼ね合いがあるので、専門家にご相談ください

注意点
・手続き開始後すぐに口座が凍結される
・遺産は相続人全員の共有財産なので、無断で出金しない
・必要書類や手続きは金融機関ごとに微妙に異なる
・預金額にかかわらず一件ごとの手間はそれなりに大変なので、生前に不要な口座は整理しておくと良い

 

仏壇・仏具について

終活 仏壇仏壇の価格帯は、どこも大きな差はない印象でした。そのため、ショールームを構える大手を選ぶと安心感があります。

近年は家具調仏壇が主流で、サイズやデザインが現代の住環境に合っているかが重要だと感じました。
一方で、親族間の習わしや考え方もあるため、身近な人と相談しながら決めることをおすすめします。

 

葬儀・法要について

葬儀 法要葬儀や法要に関して分からないことは、まず菩提寺に相談するのが基本です。また、組内の方への連絡や対応もあって、組長さんにもご挨拶。
葬儀場に移してからは会場の方ですべて取り仕切ってくれますが、それ以外のしきたりなどにも配慮が必要です。

父は四十九日の後すぐに初盆を迎えたため、精霊棚は出したままにしました。こうしたアドバイスは葬儀社の方もしてくださいました。

菩提寺だけでなく、葬儀社にも相談できたことは心強かったです。法要や仏事の相談にも乗ってくれる葬儀社を選ぶことの大切さを実感しました。

注意点
・親族の考えをすり合わせたうえで決める
・地域のしきたりなどにも配慮する
・「正解」を探しすぎない

 

車両売却の一括見積り

終活 車の処分初めて一括見積りサービスを利用しましたが、上位三社とのやり取りだけで済み、負担は最小限でした。
早めに相続物件であることを伝えておくと、スムーズに取引できると思います。

故人が大切にしていた車を、感じの良い取引と納得できる条件で手放すことができたのは良かった点です。

また、査定の前にきれいに洗車清掃したのも、思い返すとよい見送りになったように思います。

 

遺産分割協議を自分たちで行った

遺産分割協議は四十九日を過ぎてから始めましたが、可能であればもう少し早く着手したほうが無理がないと感じました。
今回は比較的トラブルが少なかったため間に合いましたが、状況次第では難航することもあります。

また、家の権利書などは、親が元気なうちに一度目を通して確認しておくことを強くおすすめします。

 

相続登記について

相続登記は「専門家に依頼しなければできない」と思われがちですが、家族間の単純なケースであれば、自分たちで相続登記を行うことも可能です。
我が家の場合、自宅は両親の共同名義でしたが、大きな問題なく手続きできました。窓口の方も親切に対応してくださいました。

家族が相続人に代わって手続きを行う場合(例:高齢の母に代わって行う場合)は、委任状が必要になります。
一連の手続きと考えていましたが、申請と登記完了後でそれぞれ別の委任状が必要でした。

登録免許税は収入印紙で納付します。事前に金額を計算し、窓口で確認したうえで購入することをおすすめします。

注意点
・相続人が多い、不動産を親族や他人と共有しているなど、状況が複雑な場合は司法書士に相談する
・相続登記は義務化されており、期限を過ぎると過料(≒行政上の罰金)の対象になる

 

お墓について

【終活】墓じまい父は生前、近隣に墓地の区画を購入していましたが、高齢の母にとっては墓地までの距離や現地の段差が負担になっていました。
そこで、自宅からすぐ近くの墓地で空き区画を見つけ、菩提寺に相談のうえ買い替えをさせていただきました。

地域や寺院によりますが、墓じまいによって空いた区画が増えているケースもあるようです
新たに墓を建立する前に、将来の参拝や管理のしやすさも含めて検討するとよいと感じました。

 

まとめ:事前準備と「無理をしない」ことも大切

死後の手続きは「何を、いつ、どこに相談するか」が分かっているだけで、精神的な負担が大きく変わります
すべてを専門家に任せる必要はありませんが、無理をしないことも大切です。

なるべく家族の手で見送ってあげることも大切な弔いであり、相続の一部(法律とは違った)であると言えると思います。

この経験が、これから親の看取りや死後の手続きに向き合う方にとって、少しでも参考になれば幸いです。

 

 

この記事を書いた人

今井 賢司
今井 賢司終活カウンセラー1級 写真家・フォトマスターEX
終活サポート ワンモア 主宰。立教大学卒。写真家として生前遺影やビデオレター、デジタル終活の普及に努める傍ら、終活カウンセラーとして終活相談及びエンディングノート作成支援に注力しています。

また、「ミドル世代からのとちぎ終活倶楽部」と題し「遺言」「相続」「資産形成」といった終活講座から「ウォーキング」「薬膳」「写経」「脳トレ」「筋トレ」「コグニサイズ」などのカルチャー教室、「生前遺影撮影会」「山歩き」「キャンプ」といったイベントまで幅広いテーマの講座を企画開催。

こころ豊かなシニアライフとコミュニティ作りを大切に、終活支援に取り組んでいます。栃木県宇都宮市在住。日光市出身。

終活カウンセラー1級
エンディングノートセミナー講師養成講座修了(終活カウンセラー協会®)
ITパスポート
フォトマスターEX

- 近況 -
・「JAこすもす佐野」「栃木県シルバー人材センター連合会」「宇都宮市立東図書館」「塩谷町役場」「上三川いきいきプラザ」「JAしおのや」「真岡市役所」「とちのき鶴田様」「とちのき上戸祭様」「栃木リビング新聞社」「グッドライフ住吉」にて終活講座を開催しました
・JAこすもす佐野にて生前遺影撮影会を開催しました

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終活相続ナビに取材掲載されました
・下野新聞に取材記事が特集掲載されました(ジェンダー特集
・リビングとちぎに取材記事が一面掲載されました(デジタル終活)

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