高齢者の見守り徹底ガイド:孤独死を防ぎ、安心な暮らしを実現するには
高齢者の孤独死が社会問題化する中、見守りの必要性は高まるばかり。この記事では、人的・技術的な見守りの具体的な方法から、ご自身でできる準備、地域全体で支える重要性まで、安心して暮らすための全てを解説します。大切な家族や地域の高齢者の安全を守り、笑顔の老後を支援するためのヒントが満載です。
孤独死、行方不明、特殊詐欺…さまざまなリスクから守るために
高齢化社会の進展とともに、一人暮らしの高齢者や高齢者のみの世帯が増加しています。厚生労働省の国民生活基礎調査によると、2022年の高齢者世帯(65歳以上の一人暮らし、または65歳以上と18歳未満のみで構成される世帯)は1,563万世帯で、全世帯の29.7%を占めています。特に、一人暮らしの高齢者は736万世帯に上り、増加の一途をたどっています。
このような状況で懸念されるのが「孤独死」です。警察庁の統計によると、2023年には全国で約2万8,000人以上が自宅で亡くなり、そのうち相当数が孤独死と推定されています。東京都監察医務院の統計では、2023年に都内で自宅で亡くなった65歳以上の人のうち、男性が2,126人、女性が1,529人の合計3,655人が「誰にも看取られることなく亡くなった」と報告されており、これは前年より増加傾向にあります。 孤独死は、発見の遅れから遺体の損傷が進み、遺族の精神的負担を大きくするだけでなく、近隣住民にも影響を与えることがあります。
また、認知症の高齢者が増加していることも、見守りの必要性を高めています。徘徊による行方不明、火の不始末、特殊詐欺被害、防災の備えなど、様々なリスクから高齢者を守るためには、周囲の目やサポートが不可欠です。
見守りのポイント
高齢者が安心して自宅や地域で暮らし続けるためには、ただ体の健康管理だけでなく、日々の生活の中でのサポートや心のつながりが重要です。
一人暮らしの高齢者や身体の衰えが見えにくい方ほど、孤立や急変のリスクが高まります。
日常の変化に気づく
食事の摂取量や部屋の状態、生活リズムの変化は体調不良や心の不調のサイン。
近隣の人や地域ボランティア、ケアマネジャーなどが情報を共有できる仕組みが必要です。
定期的な声かけ・訪問
電話や訪問でのコミュニケーションは孤独感の軽減に大きく役立ちます。
何気ない会話の中で困りごとや不安が見つかることもあります。
緊急時の備え
連絡先や持病、かかりつけ医の情報をまとめておくことは必須。
また、見守り機器や緊急通報システムの活用も検討しましょう。
見守りの具体的な方法
では、具体的にどのような見守りがあるのでしょうか。様々な方法がありますが、大きく分けて「人的見守り」と「技術的見守り」があります。
人的見守り
地域社会のつながりや、専門職による見守りです。
- 近隣住民による声かけ・訪問
最も身近な見守りです。日頃からの挨拶やちょっとした声かけ、異変に気づいた際の連絡などが有効です。
- 民生委員・社会福祉協議会
地域で孤立しがちな高齢者への定期的な訪問や相談対応を通じて、見守りを行います。
- 地域のボランティア団体
配食サービスやイベントへの参加を通じて、高齢者との接点を持ち、安否確認を行います。
- 介護サービス事業所
ヘルパーやデイサービスの職員が定期的に訪問することで、身体状況の変化や生活環境の異変に気づくことができます。
- 行政サービス
自治体によっては、地域包括支援センターが中心となり、高齢者の総合的な相談窓口として見守りネットワークの構築を推進しています。
技術的見守り
ICT(情報通信技術)を活用した見守りです。離れていても安心感を届け、異変を素早く察知する頼もしい味方です。24時間365日、高齢者の生活をそっと見守り、いざという時には速やかにサポートへとつなげます。
- 緊急通報システム
緊急時にボタン一つで通報できるシステムです。異常時には警備会社や家族に連絡が入ります。
- センサー型見守り
人感センサーや開閉センサーを設置し、一定時間動きがない場合に異常を検知して通知します。
- カメラ型見守り
遠隔地からカメラを通じて様子を確認できます。プライバシーへの配慮が必要ですが、離れて暮らす家族にとっては安心材料となります。
- スマート家電連携
エアコンや冷蔵庫の使用状況から生活リズムを把握し、異変を察知するサービスもあります。
本人の意識とIT活用も大切
安心して暮らすためには本人の意識も不可欠です。
最低限の見守り機器の操作方法を理解することや、スマートフォンを使ったオンラインミーティングへの参加方法を習得することもおすすめします。
そのことで、家族や地域の人と気軽にコミュニケーションが取れ、孤立感の軽減や迅速なサポートにつながります。
また、オンラインでの健康相談や趣味のサークル参加など、外出が難しい時も社会参加の幅が広がります。
スマホ操作のサポートで安心をプラス
高齢者がスマートフォンを使いこなすのは最初は難しいもの。
そんなとき、ショートカットを作ったり、ホーム画面に使いやすいアイコンを並べてあげるだけで、操作のハードルがぐっと下がります。
具体的なサポート事例
-
緊急連絡先をワンタップで呼び出せるアイコンを作成
万一のときにすぐに家族や近所の人に電話できて安心です。 -
オンライン通話アプリ(ZoomやLINE)を分かりやすく配置
日常のコミュニケーションが簡単になり、孤立を防ぎます。 -
健康管理アプリや服薬リマインダーのショートカット設置
毎日の服薬や体調記録が習慣化しやすくなります。 -
地図アプリや交通機関アプリをホーム画面に置く
お出かけや病院通いの際に迷わず使え、安心感が増します。
こうしたちょっとした工夫が本人の操作の自信につながり、見守りの質も向上します。家族や支援者が一緒に設定してあげることがポイントです。
見守りの課題とこれからの展望
見守りには様々な方法がありますが、それぞれに課題も存在します。
人的見守りの課題
- 見守り側の負担
近隣住民やボランティアの高齢化・減少により、見守りを行う人材が不足しています。
- プライバシーの侵害
過度な見守りは、高齢者のプライバシーを侵害する可能性があります。
- 人間関係の希薄化
都市部を中心に地域コミュニティが希薄になり、見守りの目が届きにくいケースが増えています。
技術的見守りの課題
- 費用
システムの導入には費用がかかることが多く、経済的な負担となる場合があります。
- 機器操作の難しさ
高齢者自身が機器を操作することに抵抗を感じる場合もあります。
- 誤作動・誤報
センサーの誤作動による誤報や、本当に助けが必要な時に反応しないなどのリスクも考えられます。
これらの課題を克服し、持続可能な見守り体制を構築するためには、今後の社会情勢の変化に対応した取り組みが不可欠です。
家族だけではなく地域全体で支え合う
高齢者の見守りは、離れて暮らす家族だけでなく、地域の人々や自治体、専門職の協力が不可欠です。
高齢者が孤立することなく、地域社会の一員として生きがいを感じながら暮らすためには、家族による見守りだけでは限界があります。
専門職への相談・協力を躊躇しない
私の家族も肉親の病状について、地域包括支援センターからの助言によって適切な対応ができたという経験があります。
身内のことは「まだ大丈夫」という思い込み(バイアス)が働いたり、「救急医療や病院に迷惑ではないか」という遠慮や迷いが生じることも多いのです。その点、特にいろいろな立場の専門家からの意見を聞くことができる体制があれば、早期に適切な判断を下すことができます。
地域の住民がお互いに声をかけ合い、異変があれば助け合う「共助」の精神が求められます。また、自治体が主体となり、地域包括支援センターや社会福祉協議会、NPO法人などが連携し、相談窓口の設置や見守りネットワークの構築を進める「公助」も重要です。
地域とのつながりを大切にしたい
地域コミュニティの見守り活動や、サロン、交流イベントなど参加の場を増やすことも効果的です。
定期的な見守り活動は、高齢者の安否確認だけでなく、孤立感を解消し、地域とのつながりを深める上で非常に有効です。地域の集会所やカフェなどで開かれる「高齢者サロン」や、趣味のサークル、世代間交流イベントなどは、高齢者が気軽に外出したり、仲間と出会ったりする大切な機会になります。こうした場に参加することで、地域の中で新たな役割を見つけ、いきいきと生活を送ることにもつながります。
高齢者本人ができる準備も大切
見守りは、周囲からのサポートだけでなく、ご自身でできる準備も大切です。日頃から少し意識することで、より安心して暮らすことにつながります。
連絡先や健康状態を書いたメモを常に手元に
緊急時に備え、家族やかかりつけ医の連絡先、持病、服用中の薬などを分かりやすくまとめておきましょう。
生活の変化を自分から家族や近所に伝える
体調の変化や外出の予定など、普段と違うことがあれば、積極的に伝えておくことで、異変に気づいてもらいやすくなります。
見守りサービスや地域支援の情報を知っておく
地域の介護サービスや見守りに関する情報を集め、必要に応じて活用できるよう準備しておきましょう。
スマホや見守り機器の基本操作を覚える
導入した見守り機器やスマートフォンの基本的な使い方を覚えることで、いざという時に役立ちます。
これらの小さな準備が、いざという時の大きな安心へとつながります。ぜひ、できることから始めてみてください。
見守りが「安心」と「自立」を支える
見守られていると感じることで、高齢者の安心感が増し、生活意欲も向上します。
自立支援と見守りは表裏一体です。孤独を防ぎながら、できるだけ自分らしく暮らし続けるための大切な仕組みです。
高齢者の見守りは、個人の問題ではなく、社会全体で支え合うべき課題です。
孤独死を未然に防ぎ、全ての高齢者が安心して自分らしく暮らせる社会の実現は、私たち全員の願いであり、未来の社会を豊かにするためには避けては通れない道です。
人的な温かさと、進化する技術の力を組み合わせることで、誰もが安心して暮らせる社会を目指していきましょう。あなたの「ちょっとした気づき」が誰かの安心に繋がります。
※本記事は、執筆時点における一般的な情報提供を目的としており、個別の状況に対する助言や判断を行うものではありません。実際のご判断に際しては、必ず関係法令や専門家の意見をご参照ください。また、専門家のご紹介もいたしますのでお気軽にご相談ください。
この記事を書いた人

- 終活カウンセラー1級 写真家・フォトマスターEX
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終活サポート ワンモア 主宰 兼 栃木支部長。立教大学卒。写真家として生前遺影やビデオレター、デジタル終活の普及に努める傍ら、終活カウンセラーとして終活相談及びエンディングノート作成支援に注力しています。
また、「ミドル世代からのとちぎ終活倶楽部」と題し「遺言」「相続」「資産形成」といった終活講座から「ウォーキング」「薬膳」「写経」「脳トレ」「筋トレ」「コグニサイズ」などのカルチャー教室、「生前遺影撮影会」「山歩き」「キャンプ」といったイベントまで幅広いテーマの講座を企画開催。
こころ豊かなシニアライフとコミュニティ作りを大切に、終活支援に取り組んでいます。
終活カウンセラー1級
エンディングノートセミナー講師養成講座修了(終活カウンセラー協会®)
ITパスポート
フォトマスターEX
- 近況 -
・「JAこすもす佐野」「栃木県シルバー人材センター連合会」「宇都宮市立東図書館」「塩谷町役場」「上三川いきいきプラザ」「JAしおのや」「真岡市役所」「とちのき鶴田様」「とちのき上戸祭様」「栃木リビング新聞社」「グッドライフ住吉」にて終活講座を開催しました
・JAこすもす佐野にて生前遺影撮影会を開催します
終活相談・講座のご依頼はお問い合わせフォームからお願いします。
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・終活相続ナビに取材掲載されました
・下野新聞に取材記事が特集掲載されました(ジェンダー特集)
・リビングとちぎに取材記事が一面掲載されました(デジタル終活)
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