世代間格差を超えてつながる終活――分断の時代に考えたいこと

格差社会近年、年金や医療・介護といった社会保障を巡って、「若者が損をしている」「高齢者ばかり優遇されている」といった声が強まっています。SNS上には世代間の不満が可視化され、あたかも「高齢者 vs 若者」の構図が存在しているかのような空気が広がっています。

しかし、こうした対立が表面化する背景には、格差の拡大や将来不安という構造的な問題が潜んでいます。

社会保障は「調整」が必要、だが「支援の縮小」には落とし穴も

もちろん、社会保障制度を持続可能な形に見直していくことは不可欠です。超高齢化社会において、若い世代への過重な負担を軽減する工夫や制度改革は避けて通れない課題です。

ただし一方で、高齢期の支援を必要以上に薄くすることは、「負担の先送り」にすぎないという側面も忘れてはなりません。例えば、

  • 公的介護サービスの縮小により、家族の負担が増える

  • 終末期医療への支援が減れば、本人も家族も過酷な選択を迫られる

  • 公的保障が下がる分、民間の保険や備えを個人でカバーしなければならない

といった具合に、別の形で「自己責任」の負担が増える可能性が高いのです。

つまり、見かけの制度負担を減らしても、最終的には若い世代自身が将来さらに大きな負担を背負うことになりかねないということです。

終活は世代間の分断をほどく「対話の入り口」

こうした時代背景の中で、私たちがあらためて意識したいのが「終活」の役割です。

終活とは、自分の死後を整理することだけではありません。家族と向き合い、自分の歩みを振り返り、次の世代に何を手渡すかを考えるプロセスでもあります。

  • 親の思いと子どもの現実をすり合わせる

  • 医療や介護の希望を共有し、家族の負担を軽くする

  • 財産だけでなく、人生の物語を手渡す

このような対話は、世代間の誤解や断絶を和らげ、“対立”から“つながり”へと価値観を転換する機会にもなり得ます。

社会全体で「共に生きる」意識を取り戻す

分断の空気が漂う時代だからこそ、世代を超えて共に生きる社会のあり方を見つめ直すことが大切です。

若い人にとっても、高齢者にとっても、「未来に向けた責任ある選択」をどうしていくかが問われています。終活を通じて、個人レベルでの備えを進めるとともに、“誰かの負担にならないため”ではなく、“未来の支え合いの仕組みを整えるため”という発想を持つことが、これからの時代に求められるのではないでしょうか。

世代をつなぎ直すという視点

格差社会の中で進行する世代間の対立。しかし本当に必要なのは、対立ではなく世代をつなぎ直す視点です。

終活は未来の安心をつくるだけでなく、今ここにある世代間の分断をほどいていく力も持っています。私たち一人ひとりが、次の世代への思いやりを持ち、自分の生き方を整えること――その意識がこれからの社会を支える土台となるはずです。


※本記事は、一般的な情報提供を目的としており、個別の状況に対する助言や判断を行うものではありません。実際のご判断に際しては、必ず関係法令や専門家の意見をご参照ください。また、専門家のご紹介もいたしますのでお気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

今井 賢司
今井 賢司終活カウンセラー1級 写真家・フォトマスターEX
終活サポート ワンモア 主宰 兼 栃木支部長。立教大学卒。写真家として生前遺影やビデオレター、デジタル終活の普及に努める傍ら、終活カウンセラーとして終活相談及びエンディングノート作成支援に注力しています。

また、「ミドル世代からのとちぎ終活倶楽部」と題し「遺言」「相続」「資産形成」といった終活講座から「ウォーキング」「薬膳」「写経」「脳トレ」「筋トレ」「コグニサイズ」などのカルチャー教室、「生前遺影撮影会」「山歩き」「キャンプ」といったイベントまで幅広いテーマの講座を企画開催。

こころ豊かなシニアライフとコミュニティ作りを大切に、終活支援に取り組んでいます。

終活カウンセラー1級
エンディングノートセミナー講師養成講座修了(終活カウンセラー協会®)
ITパスポート
フォトマスターEX

- 近況 -
・「JAこすもす佐野」「栃木県シルバー人材センター連合会」「宇都宮市立東図書館」「塩谷町役場」「上三川いきいきプラザ」「JAしおのや」「真岡市役所」「とちのき鶴田様」「とちのき上戸祭様」「栃木リビング新聞社」「グッドライフ住吉」にて終活講座を開催しました
・JAこすもす佐野にて生前遺影撮影会を開催します

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終活相続ナビに取材掲載されました
・下野新聞に取材記事が特集掲載されました(ジェンダー特集
・リビングとちぎに取材記事が一面掲載されました(デジタル終活)

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