終活実践例 相続篇

終活実践例 相続篇

弁護士の松田です。今回は「子どもに迷惑をかけたくないので自分の手で相続に関するヤヤコシイことを整理した」という事例をご紹介します。

※相談者のプライバシーを考慮し、一部書き替えています

ご相談のきっかけ

Aさんの父は、何十年も前に、親戚夫婦に土地を貸しました。

親戚夫婦(Bさん、Cさん)は、その土地の上に自分名義の建物を建て、暮らしていました。

時間は流れ、Bさん、Cさんとも亡くなりました。BさんとCさんには子供がいなかったため、建物は、空き家となりました。

そして、Aさんの父も亡くなり、Aさんがその土地を相続しました。

建物は、長年にわたって空き家になっていたことから傷みがひどく、屋根(ルーフィング)はボロボロになって所々穴が開いていました。

また、建物の中にヤブカラシなどの植物が生えていました。

Aさんは、自分の子供にはこの建物付き土地を相続させるわけにはいかないとの思いから、自分の手で建物を壊そうと決意して私のところに相談に来られました。

 

解決への道

相続調査

建物は、Bさんの相続人とCさんの相続人の共有物となっていました。

そのため、建物を壊すためには、Bさんの相続人全員とCさんの相続人全員から建物を解体することについての同意を頂く必要がありました。

私は、戸籍をたどって、BさんとCさんの相続人を特定する作業に入りました。

BさんとCさんには子供がおらず、かつ両親は亡くなっていましたので、BさんとCさんのきょうだい全員がBさんとCさん相続人となります。

調べたところ、Bさんは6人きょうだい、Cさんは8人きょうだいでした。

きょうだいの多くは既に亡くなっていました。

きょうだいがBさんやCさんより先に亡くなっているときには、きょうだいの子(甥、姪)が相続人となります(代襲相続)。

当時、Bさんが亡くなってから約30年、Cさんが亡くなってから約20年が経過していたことから、きょうだいがBさんやCさん方より後に亡くなっている場合もありました。この場合にはきょうだいの相続人が相続人となります。

数えきれないほど多くの戸籍を取り寄せた結果、BさんとCさんの相続人はなんと合計16人に上りました。

相続人とのお話し合い

相続調査の結果判明した相続人全員に、建物の解体に同意をして頂きたい旨の手紙を出しました。

幸い、全員の方が事情を理解して下さり、建物の解体に同意して下さいました。

 

建物の解体、懸案の解決

Aさんは、BさんとCさんの相続人の全員の同意を頂けたことから、建物を解体しました。

 

自身の手で終活を一つ成し遂げた

Aさんは、子どものために面倒なことから逃げず、真正面から向き合って解決したのであり、ご自身の手で終活を一つ成し遂げた例といえます。

今後も終活実践に関するこのような事例をご紹介したいと思います。

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この記事を書いた人

松田道佐
松田道佐
弁護士。1998年(平成10年)4月に弁護士となり、個人、会社から様々な依頼を受けてきた。現在、個人については終活を踏まえた「任意後見」「民事信託」「遺言」等の財産管理業務や遺産分割に重点を置いて活動中。